高齢者の財産管理(任意後見制度・法定後見制度の利用)
年をとるにつれて、物忘れが激しくなり、これから自分の財産をきちんと管理できるか不安だが、安心して財産の管理を任せられる親族がいない方、高齢の親や親族の介護をしているが、財産管理は難しくて手に負えないという方、認知症になった親の面倒をみているが、金融機関などから裁判所が選んだ成年後見人でないと預金の引き出しはできないと言われた方などの相談をお受けいたします。
処理手順
任意後見制度を選択できる場合(依頼者に判断力がある場合)
任意後見制度は、本人にまだ判断力があるうちに、将来認知症などで判断力がなくなった場合に備えて、自分で選んだ代理人(任意後見人)と、自分の財産の管理や療養看護に関する代理権を任意後見人に与える契約(任意後見契約)を締結しておく制度です。任意後見契約は公証役場で、公証人の作成する公正証書で締結します。
この制度のメリットは、任意後見人を誰にするか、任意後見契約の内容をどうするかなどを、ご自分で決められることです。
また、オプションで、任意後見契約において、判断力がある時点からの財産管理も委任することができます。
- 事前調査を行い、財産目録と年間収支予定を作成します。
- 公証人役場で任意後見契約を締結します。
- 場合によって、財産管理能力の有無について、医師の診断書を求められる場合があります。
- ご本人に判断力がなくなった場合に、任意後見人の請求により裁判所が後見監督人を選任します。
- 任意後見人は、任意後見契約に定められた内容に従い、裁判所と後見監督人の監督の下で、本人の代理人として、財産管理や療養看護に関する契約を行います。
法定後見の場合(依頼者に正常な判断力がない場合)
法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の3つの制度があり、ご本人の判断力により、どれを利用できるかが決まります。
法定後見制度では、裁判所の選任した成年後見人が、ご本人の代理人として、ご本人の利益を考えて、ご本人の財産を管理したり、ご本人の財産上の行為に同意を与えたりします。
- 成年後見人等の選任に必要な資料を集めます。
(財産管理能力の有無について、医師の鑑定書が必要です。) - 家庭裁判所に成年後見人等の選任の申立をします。
- 家庭裁判所の決定により成年後見人等が選任されます。
- 「後見」の場合
成年後見人が財産の管理を開始します。
成年後見人は、就任後、速やかに財産目録と年間の収支予定を作成し、裁判所に提出します。その後、1年ごとに財産目録と報告書を裁判所に提出します。
解決事例
任意後見制度を利用した事案
Aさんは高齢でしたが、財産管理能力がありましたので、Aさんと任意後見契約を締結し、Aさんには老人ホームに入居してもらいました。この任意後見契約では、オプションで直ちにAさんの財産の管理を開始することになっていましたので、家賃収入を管理している親族と交渉し、家賃が振り込まれる通帳、キャッシュカード、印鑑や家賃収入を管理するために必要な書類すべての引き渡しを受け、Aさんの財産の管理を開始しました。
現在、Aさんは、老人ホームで生活しており、その費用は、当事務所で管理しているAさんの家賃収入から支払っています。また,Aさんの税金、Aさんのマンションの管理費用なども、事務所で管理しているAさんの家賃収入から支払っています。
今後、Aさんが判断力を失った場合には、裁判所に後見監督人の選任を請求します。
法定後見制度を利用した事案
Bさんは認知症で財産管理能力がありませんでしたので、Bさんの親族が成年後見人の選任を裁判所に申し立て、裁判所の決定により、当事務所の弁護士が成年後見人に選任されました。
Bさんは既に老人ホームに入居していましたので、家賃収入を管理している知人と交渉しましたが、その知人は、家賃収入を管理するために必要な書類の一部を引き渡さず、収支の明細も明らかにしませんでした。
そこで、Bさんのアパートの入居契約を仲介していた近所の不動産業者に、Bさんのアパート全室の管理を委託し、全入居者の契約内容を確認してもらうとともに、毎月の家賃の集金もお願いしました。この結果、Bさんのアパートの家賃収入をすべて取り戻すことができました。
現在、Bさんは、老人ホームで生活しており、その費用は、当事務所で管理しているBさんの家賃収入から支払っています。また,Bさんの税金、Bさんのマンションの管理費用なども、当事務所で管理しているBさんの家賃収入から支払っています。